<< July 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< ウェルニッケ脳症 | main | 子宮収縮薬(オキシトシン等による陣痛促進) >>

産科危機的出血

0
    お産は命懸けだと思うことがあります。2006年(平成18年)に,福島県で帝王切開中に産婦さんが死亡するという痛ましい事例がありましたが,これ以外にも,妊娠中に特に問題なく経過し,赤ちゃんも無事生まれたのに,分娩後も出血が継続して,結果,妊産婦死亡にいたる事例もあるようです。
    2010年(平成22年)から,日本産婦人科医会妊産婦死亡症例検討評価委員会によって行われている,「母体安全への提言」は2012年(平成24年)に3度目の提言をしています。
    この提言には,「2012年(平成24年)は,この3年間でもっと多い,60例もの妊産婦死亡が発しました。自殺や事故など,偶発的な事例を除く必要がありますが,前年の41例と比べても増加しいることは明らかです。原因は,これまでと同様に,危機的産科出血による死亡がトップであり,減少の傾向が未だみられません。産科危機的出血に対して,早急なる対策が必要です。」と記載され,また,「原因で最も多かったのが産科危機的出血で28%を占めていた。」と記載されています(「母体安全への提言2012」3頁,7頁)。ちなみに,2012年(平成24年)の出生数は103万人余りです。
    わが国の妊産婦死亡率は,過去との対比でも,諸外国との対比でも,とても低くなっているわけですが,にもかかわらず,年間60名の妊産婦が亡くなっておられるのは,多いなあというのが卒直な感想です。また,そのうち16,7人の方が出血に原因があるというのも意外でした。
    ところで,産科危機的出血に対しては,日本産科婦人科学会ほかの5学会で,2010年(平成22年)に「産科危機的出血への対応ガイドライン」というものを作成しておられます。
    そのガイドラインには,生命を脅かすような分娩時あるいは分娩後の出血は,妊産婦300人に約1人に起こる合併症であること,予期せぬ大量出血もあること,比較的少量の出血でも産科DIC(出血傾向が強まり,血栓による臓器不全の症状が出る)を併発しやすいという特徴があることなども紹介されています。
    そして,このガイドラインによれば,ショックインデック(SI,心拍数/収縮期血圧)に留意して管理することを勧めています。そして,ショックインデックスが,1.5以上になった場合,「直ちに輸血開始」すべきとしています(前記ガイドライン1頁)。ちなみに,妊婦のショックインデックス1.5というのは,約2.5Lの出血量であることが推測されるようです。(女性の血液量は体重の7%とされ,妊娠中は30〜50%増加するとされるので,体重50圓稜ド悗侶豈嬶未錬粥ィ機腺機ィ毅未反簑されます。)
    輸血には準備が必要ですから,直ちに輸血開始するためには,輸血パックを取り寄せたりその他の輸血の準備は,それ以前にしておく必要があるということになります。これらの手順が尽くされてないために,母体が死に瀕することがないよう,ガイドラインでは,ショックインデックス1.0の段階で輸血の準備を勧めています(前記ガイドライン1頁)。
    統計的には,出血により死亡する妊産婦の数は,ごく少数ですし,危機的出血が発症したからといって,必ず死亡するわけではありません。他方,輸血製剤の効率的な利用が求められている状況もあると思います。しかし,当該妊産婦やその家族,特に生まれてきた赤ちゃんにとっては,かけがえのない,100パーセントの母体なのですから,危機的出血に陥ったら,万全を期して対処してもらいたいと思っているはずです。親身になって考えれば当然と思います。
    産科危機的出血への対応ガイドラインに沿った輸血が100%実施されることを願わずにはいられません。
    JUGEMテーマ:妊娠、医療問題


     
    シヨウセイ * 医療事故 * 14:14 * comments(0) * -

    コメント

    コメントする









    このページの先頭へ